伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「大丈夫よ。散歩してるだけ。心配してくれてありがとう、アン」
「みゃー」
アンはそのままスタスタと森のほうへと入っていく。
「も、もしかして猫と話ができるの?」
ビアンカは怪訝そうな表情でお腹に手を当てたドロシアを仰ぎ見た。
「いいえ。でも一緒に暮らしているから、心配してくれてるかとか喜んでくれてるかくらいはわかるわ。……あのね、ビアンカ様。まだ内緒なんだけど、私、子供ができたみたいなの」
「えっ?」
「母親になるって凄いのね。私、この子のためならどんなことでもできる気がする。今の生活を脅かすものが現れたとしても、どんなことをしても守るわ」
それは、半信半疑なビアンカには、脅しのようにも取れる。
身をすくめて、「わ、私は何もしないわ」と叫び、耳を塞ぐ。
「やだ。ビアンカ様が何かするなんて思ってないわ」
ドロシアは優しく彼女の手を取った。
「あなたが、あなたの好きな人とうまくいくように、祈ってる」
「……ドロシア様」
ビアンカは結局帰るまで、ドロシアに対して不信な様子だったが、帰り間際に「彼とは夜会で会う約束をしたの」とこっそり耳打ちしてくれた。
ドロシアは応援の気持ちを込めて彼女を抱きしめる。
「教えてくれてありがとう」と心からの感謝を添えて。
ビアンカと友人になれるかは分からないが、少なくとも、その美しい容姿に気後れすることは無くなっていた。
それも、隣にいる彼とまだ見ぬ子供のおかげだと思うと嬉しくなる。