伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「やれやれ、やっと帰ったな」
「そうですわね。私もあなたに報告したいことがあったのに、タイミングを逃して困っていました」
「報告って?」
「確実ではないんですけれど」
ドロシアは、使用人のなかでも産婆的な役割をしてきた老女に、月のものが来ないことや体調の変化などを相談していた。そして、今朝、おそらく懐妊だろうと言われたばかりだとこっそり耳打ちする。
オーガストは目を点にして、彼女の顔とお腹を目で往復した。
「……本当かい?」
「月のものも来ませんし、食事の趣味も変わりました。多分……ですけれど」
「ドロシア。……君はなんて凄いんだ!」
勢いよく抱きしめたオーガストは、はっと我に返って、「いけない! つぶれてしまう」と、壊れ物を扱うようにそっと抱きかかえなおす。
「私が凄いんじゃありませんわ。ふたりの子供じゃありませんか」
「だって。まさか本当に子ができるなんて。やっぱり君とだからに決まっている。ああ、君を抱きかかえてみんなに報告して回りたいけど、安静にしてなきゃダメだよな」
「屋敷の人になら、一日もあれば伝わります。慌てなくても、夕食の前にみんなを集めれば済む話し合ってですわ」
子供のように浮かれるオーガストを、ドロシアはとても幸せな気分で見つめていた。