伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「お願いですから、もう少しここにいさせてください。伯爵が私をお気に召さないというならば仕方ありませんが、そうでないのならお互いを知る時間を持ってもいいじゃありませんか」
真摯に見つめてくるドロシアにノーベリー伯爵は軽くほほを染めつつ、困ったように頭をかいた。
「しかし、僕は今、急ぎで世継ぎを産んでくれる妻を探していてね。君がだめなら、他の令嬢を探さなくてはならないから」
「私は元々あなたに嫁ぐつもりでここへ来ました。それとももう、対象外なんですか?」
言ってから、ドロシアは自分でびっくりした。
なんで自分から自分を売り込むような発言をしているのだろう。
「そういうわけじゃない。ただこの結婚は君を幸せにしないと思う」
「そんなの分からないじゃないですか。私が、あなたに恋をする可能性だってあります」
言ってから恥ずかしくなってきてドロシアは顔を赤くする。
しかし、ノーベリー伯爵は困ったように顔をゆがめた。
「それはないよ。僕に恋をする女性などいない。……馬は三日もすれば動けるようになるだろう。そうしたらお帰り」
さらり、と頭を撫でて、ノーベリー伯爵は先に歩き出した。
残されたドロシアのもとへ、チェスターが慌てて駆け寄ってくる。
「ドロシア様、気になさらないでください。オーガスト様はちょっと頑固なんです。きっと照れているんですよ」
「……いいえ。きっと私がお気に召さないんだわ。赤毛だしそばかすだし……全然綺麗じゃないし。昨日なんて起きもしないで寝過ごしてしまったし」
二度目の拒絶に、ドロシアも自信がなくなってきた。
白のドレスをくしゃくしゃにして、髪もボサボサ。呆れられるのも当たり前だ。優しさでああ言ってくれたのだろうが、若いだけで美しくもない自分を見て、伯爵はきっと幻滅したのだ。