伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「ね、エフィー。私、女性の話し相手が欲しかったの。良かったらそこに座ってお話してくれないかしら」
「えっ。でもそんな。光栄なんですが、仕事がありまして」
「だったら後で私も手伝うわ。ふたりでやればすぐ終わるでしょう? ね、お願い。話し相手になってよ」
「そんな! 奥様になる方に厨房仕事など」
「あら。私は実家でもずっと食事の支度や洗濯をしていたのよ。ずっと部屋に閉じこもっているのも暇だし、一緒に仕事をしながらいろいろ教えてもらいたいわ」
「でも……いいのでしょうか」
「いいのよ。座って。ひとりだと寂しいし」
「そういえば侍女はお連れにならなかったのですね」
みんなからそう聞かれて、ドロシアはだんだんごまかすのも面倒になってきた。
「侍女なんて雇えるほど裕福じゃなかったの。……男爵家と言っても貧乏でね。使用人も二人だけ。家のことはほとんど私がやっていたわ。でも食事はみんな揃って食べたわ。弟のヒースはそっぽを向いていたし、父は黙って食べるだけだったけれど。私とメイドのマギーがしゃべり続けていたから賑やかだった」
「まあ。うふふ」
「だから、……ひとりで食べるのって落ちつかなくて」
「そうなんですか。旦那様はいつもひとりで召し上がるので、高貴な方はおひとりが好きなのかと思いましたが、違うんですね」
エフィーはドロシアに同情したのか、その後はおとなしく席に着き、この屋敷の話をしてくれた。
ノーベリー伯爵は主に投資の仕事で暮らしているので、屋敷から出ることはほとんどないのだという。
情報を持ち込み、伯爵の指示を受けまた出ていく役目の家来が数人いて、外界とのつながりはほとんどそれだという。チェスターもその一人のようだ。
ただ、どうしても出席しなければならない王家からの呼び出しの時のみ、自ら領地を出るのだそうだ。