伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「旦那様はもう長い間おひとりでおられるので、誰かと食事をする楽しみなど忘れているかもしれませんね。ドロシア様が嫌でなければ、一緒にお食事されるように言ってみてはくださいませんか?」
「そうね。そうしたいけれど。……本当は帰るように言われているの。チェスターが気を利かしてくれて、三日はいられることになったけれど。どうやら伯爵さまは私をお気に召さないらしいわ」
「そんなこと!」
「本当よ。だから余計なことをしてはもっと早く帰れと言われてしまうかもしれない」
「そんな……オーガスト様ったら、何を考えているのでしょう」
焦りだすエフィーをなだめようとしたとき、窓の外から騒がしい音が聞こえてきた。
「あら? お客様? 馬が」
二頭立ての馬が砂煙を上げながら入ってくる。
「誰かしら。嫌だなぁ。……たまに、どうしても直接旦那様に会いたいという方が来られるんです。でも、大抵お約束されていないので旦那様は不機嫌になるんです」
怖いんですよー、とエフィーが嘆く。
ドロシアは気になったので、残りの朝食を手早く食べ終えると、ちょっと見てくるわ、と部屋の外に出た。
エフィーは心配そうな顔をしつつ片づけを始める。
廊下に出たとたん、玄関からのチェスターの声が響いていた。見ると、前のめりになって屋敷に入ってこようとしている恰幅のいい男性と若い女性、そしてお付きの人間を、押しとどめようと両手を広げている。