伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

(彼のことがよくわからない。いったい何を考えているんだろう)


今日の子爵への態度を見ていれば、偏屈だという噂が立つのもなんとなくわかる。
けれど、朝の猫に対する態度や、ドロシアに向けてくる態度はそれとはまったく違う。穏やかで優しくてどちらかと言えば間が抜けている感じだ。


(どっちが本当の彼なんだろう)


その後胸に湧いた気持ちは、ドロシア自身意外に思うものだった。


(知りたい。彼のこと)


このままあっさり追い返されるのも、なんとなく釈然としない。
帰ったほうがいいとオーガストは言ったが、帰ったところで男爵家が危機に瀕していることに代わりはないのだ。


(知りたいんだから、ここにいればいいのよ。じっとしているから迷ってばかりいるんだわ)


ドロシアはドレスの袖をまくり上げる。そして、パタパタと階下へ降りて行った。


「どうなされました、ドロシアさま」

「チェスター、厨房はどこかしら」

「そこの廊下をまっすぐ行った先ですが。どうして……」

「エフィーの手伝いをするの! まずはこの屋敷に慣れないと! そうでしょう?」


けたたましい音を立てて走っていくドロシアを、チェスターは見送った後で噴き出してしまった。


「なかなか根性のあるご令嬢だなぁ。さあ、オーガスト様、どうするんだろう」


ゆったりと言って執務室を見つめる。その顔には笑みが浮かんでいた。

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