伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます


 昼過ぎからずっとエフィーと一緒に夕食の準備をしていたドロシアは、窓の外に大きな満月を見つけて、顔を綻ばせた。


「まあ、今日は満月ね。綺麗」

「そうですね。すっかり手伝っていただいて申し訳ありません、ドロシア様」

「いいのよ。暇だもの。これがオーガスト様の夕食? 私持っていくわ」

「いえ、それはドロシア様の分です。オーガスト様は今日は夕飯をいらないとおっしゃってます」

「どうして?」

「いつも屋敷にこもっておられる方ですので、一日一食程度しか召し上がらないんですよ」

「でも、それじゃあ体に悪いわ」

「慣れていらっしゃるから大丈夫です。さあ、ドロシア様もお部屋でどうぞ」


エフィーにお盆に乗った食事を押しつけられ、ドロシアは困ってしまう。


「だったらここで食べちゃダメかしら。私、一人で食事するの本当に嫌いなの」

「申し訳ありませんが、私もまだ仕事があります。後程お盆を取りに行きますから、お部屋に置いておいてくださいませ」

「……はぁい」


仕方ない。

今日は一生懸命仕事を手伝ったつもりだが、人手の足りないこの屋敷ではきっとまだまだ仕事があるのだろう。

一日屋敷を歩き回ってみて、驚くほど使用人の数が少ないことに気付いた。
庭周りをことをする従僕と屋敷内のことをする女性の使用人が二名ずつ。みんな年配で、話しかけても頭を下げて微笑むばかり。同年代と思えるのはエフィーとチェスターくらいなものだ。

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