伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「ごめんね。驚かせただろう」
「いいえ。平気です。でもじゃあ、オーガスト様が百年生きているっていうのは……」
「そう。その話だ。猫化体質で外に出るのも苦労したけれど、投資の仕事がずっとうまく行っていたから、領地からそれほど外に出なくても、生活はできたんだ。どうしても国王様のもとに挨拶に行かなければならないのは、年に一度の国王様の誕生祭の時くらいだし。昔はそんなに頻繁に猫化しなかったから、それくらいならやり過ごすことができたんだ。妻はもらったが、猫化の事実を知ると彼女は僕を拒絶して、別荘を建ててそこに引きこもったまま死んだ。結局子を作ることはかなわないまま、僕はその生を六十歳まで生きた。馬から落ちてね。そのまま死ぬんだと思った。僕が死んだら使用人たちはどうなるんだと不安で仕方なかったよ。何せ魔女の血を受け継ぐものばかりだ、また魔女狩りが起こったときに守る人間がいなくなる」
死ぬ時まで使用人の心配をしていたのか、とドロシアは少し呆れてオーガストを見つめる。
彼は、優しすぎるのではないだろうか。死ぬ時くらい自分のことだけ考えればいいのに。
「でもね、目が覚めたら、十七歳の自分に戻っていた。驚いたよ。そのときも猫の声が頭に響いた。【これから七度目の生が始まるよ】とね。その時、猫は九生を持つ、という不思議が本当なんだと信じられるようになったんだ。そんな感じで、僕は猫の魂と融合したまま生きてきたんだ。若くして死んだときもあったけど、再び生まれ変わるときは必ず十七歳の時の自分だった。……都合よかったよ。ちょうど国王様に挨拶するような年齢だからね。適当な頃合いに妻をもらったという報告さえ入れておけば、子が生まれたかどうかまできちんとチェックなどしない。辺境地だから、わざわざ確認にも来ないんだ。生まれ変わったタイミングで名前を変え、ノーベリー伯爵家の嫡男ですと挨拶に伺えば誰も疑われずに爵位を継承できた」
「まあ」
王国も適当なものだな、と思ったけれど、実際にはそんなものかもしれない。