伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
ましてオーガストそのものが若くなっただけなのだ。肖像画でも持っていけば迷うことなく子孫だと信じてもらえたのだろう。
「じゃあ」
「ここ四代くらい、ノーベリー伯爵は同一人物……僕のことを指すんだよ。そして今、僕は四度目の生まれ変わりの人生を歩んでいる。猫の九生の最後の年で、僕はたぶんもう生まれ変われない。……今度こそ本当に世継ぎをもうけないとならないんだ」
「それで、私を?」
「秘密を守ってもらうために、金銭的に弱みのある令嬢を探していたんだ。……でも、まさか来るのが君だとは思わなくて」
オーガストがドロシアの髪に手を伸ばした。一筋つかんで、指に絡めてキスをする。
そんなことをされたことのないドロシアは顔が真っ赤になった。
「……昔、君と国王様の誕生祭で沸く王都で会ったとき、僕は一年ぶりの王都訪問だった。四度めの生である今回は、猫化するタイミングが頻繁でね。あの時も急に猫化が起こって、サポート役として連れてきたデイモン……彼はチェスターの父親なんだけど。まあ彼に後を任せて、僕自身は逃げ出したんだ。でも途中で犬に出会って、追いかけられて。……心底困ったよ。途中で人間に戻っても裸だからね」
「その時に私が来たんですね」
「そう。勇敢な女の子だなって思ったんだ。赤い髪が太陽の光を受けてキラキラ光って、僕は天使が現れたのかと思ったものだよ。助けてくれた君が眠ってしまって、力が緩んだところで僕は逃げ出した。デイモンが見つけてくれるまで隠れるのが大変だったよ」
「まあ」
「着替えて戻ったら、もう君はいなくなっていた。きっと親元に帰ったんだろうと思っていたんだ。まさかメルヴィル男爵家のご令嬢だったとはね」