伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「お、オーガスト様っ……。や、そ、そちらのご令嬢はもしかして」

「ドロシア=メルヴィル男爵令嬢だよ。僕の花嫁だ。戻って来たばかりで悪いんだが、またすぐに婚姻の届を出しに王都へ向かって貰うことになりそうだ」

「それは……かまいませんが、先月求婚の文を出したメルヴィル男爵家ですよね。もう猫のこともお話に?」


デイモンは驚きで開いた口がふさがらないようだ。ドロシアは、安心させるようにゆったりと微笑んでドレスの脇をつかんでお辞儀する。


「初めまして。ドロシア=メルヴィルです。どうぞよろしくお願いします」


ドロシアが普通に会話するのを見て、ようやく信じられるようになったらしい。デイモンは顔を晴れ渡らせた。


「あ……ええ。私はデイモン=メイスンです。オーガスト様の仕事のサポートをさせてもらっています。……いやあ、これはおめでとうございます。オーガスト様、良かったですなぁ。猫のあなたといて、こんな平然としているなど肝の据わったお嬢様だ。や、めでたい。是非いろいろ話を聞かせてください。私も商談の結果をお伝えせねばなりませんし」

「まずは落ち着いてお茶でもいかがですか。エフィーに頼んできますよ」


チェスターに促され、一行は中に入った。


「……ムズムズする」


猫のオーガストはそう言うと、一気に二階までの階段を駆け上がった。


「戻る兆候ですかな」


デイモンやチェスターは特に驚いた様子もない。ドロシアだけが物珍しく彼の消えていった階段を見つめる。


「ドロシア様、応接室で待ちましょう。いずれ戻ってまいりますよ」

「は、はい」

「私は厨房に声をかけてまいります」


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