伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「まあ、それならば結構です。お世継ぎの誕生は、ノーベリー伯爵家の悲願です。膨大な利益を生み出す投資の仕事も、この屋敷も広大な土地も、受け継ぐものがなくては全て水泡に帰してしまう。期待しておりますよ」

「はあ……」


あけすけに子作りのことを言われるのも、それだけのために呼ばれた花嫁のようで癪だが、実際貴族の結婚の意義はそこに尽きる言われればそうだ。

ドロシアは頷き、ふと、そういえば彼の妻は誰なのだろう、と思った。


「あの、デイモンさまはチェスターのお父様なんですよね?」

「ええ。私のことはデイモンとお呼びください」

「奥様……チェスターのお母さまはどなたなんですか? 私、数日ここにいたのに、ご挨拶もしていないかも……」

「ああ」


デイモンは腕を組み、しばらく顎に手を当てて考えていた。


「先ほど秘密を聞いたと言いましたね。でしたら、今夜にはご紹介できると思います。名はクラリス。先祖返りで魔力が強いので、今は地下に隠れていると思います」

「隠れて……?」

「失礼ながら、あなたという花嫁が信用たる人物かどうかは、日が経たないと判断できません。秘密を守れる人物か判断し、本当に結婚すると決まるまで、魔力の強い人物とは対面させないほうがいい。これは伯爵の判断でもあります。あなたが見た使用人は非常に少なかったでしょう?」

「ええ」


今までに見た人間は、エフィーやチェスターを含めて六人だ。屋敷の規模の割には驚きの少なさだと思っていた。
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