伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「もうお伝えしてもいいんですよね。旦那様」
デイモンがそう言ったのと同時に、扉の開く音がする。
振り返ったドロシアは、そこに人間の姿に戻ったオーガストを見つけた。
彼はすぐにドロシアの隣に座り、不安そうな瞳を向けるドロシアの手を握りしめた。
「いいよ。じきに説明するつもりだったんだ。……ドロシア、いろいろ隠していてごめん。驚いた?」
オーガストのとび色の瞳に見つめられると、緊張で固くなっていた体が解けてくる。
ドロシアは安心感に息をついて、姿勢を正した。
「いいえ。驚いてはいますけど、……仕方ないと思っています」
「エフィーはそうでもないが、中には魔力が強い魔女もいる。クラリスは特にね」
「なにせ私の折れた足を一日で治しましたからな」
デイモンが思い出したように笑う。
よくよく聞くと、二人のなれそめは、森に迷い込んで、馬から落ちて怪我をしたデイモンをクラリスが助けたことによるらしい。
彼女のことを話すデイモンの表情は優しく、ドロシアも親しみを感じる。
悪い人ではないのだろう、とドロシアは彼に対する印象を修正した。
オーガストは指折りながら使用人の数を数えていたが、そのうちに諦めたらしい。会ったほうが早いとばかりに「今晩、みんなを紹介しよう。この屋敷の部屋が埋まるくらいの人数はいるよ」と提案した。
「そんなにですか?」
「ああ。それでも、当初逃げ込んだ人々の数からみれば減っているよ。家族でいた人たちの子供も大きくなったし、年老いたものは死んでいった。ここでは知った顔しかいないから、家庭を持てずに独身のまま死んでいくものも少なくない。そういう意味では高齢化しているね。最年少でチェスターなんだから」
「あ、……そうか。そうですね」