伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
外部からくるものが秘密を守ってくれるとは限らない。デイモンのようなケースはまれなのだ。
オーガスト本人でさえ、生まれ変われる間は妻をもらわなかったくらいなのだから、外部から人を招き入れることには、相当気を使っているのだろう。
ドロシアは秘密を守るという使命の重さを感じ、改めて使用人たちの生活を維持するために、オーガストが資産の保有にこだわることに納得した。
なんとなく静まり返った室内に、軽快なノックの音が響く。
「入りますよ」
と明るい声を出して入って来たのは、紅茶の乗ったワゴンを引いたチェスターだ。
「お待たせしました。エフィーを探すのに手間取ってしまって」
「チェスター。地下の人々にもう出てきてもいいと伝えてくれ。ドロシアは正式に僕の妻になる。紹介するから夕食の席にはみんな集まるようにと」
「そうですか! いやー、良かった。おめでとうございます!」
「配膳は私がやろう。お前は地下に行ってみんなに話してきなさい」
素直に喜ぶチェスターに、デイモンがそう告げ、仕事を引き継いだ。チェスターはステップも軽やかに部屋から出ていく。
「落ち着きがない息子ですいませんな、ドロシア様。しかし、あいつが我らの希望なのです」
「チェスターはとても気の付く優しい人です。私も、何度も助けてもらいましたわ」
大きな家族同然に暮らしてきたこの屋敷の人々にとって、チェスターは子供のような存在なのだろう。
「……では、私が聞いていた市場の動向ですが……」
紅茶を配り終えたデイモンは、気分を入れ替えたように話を切り出す。