伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

最新の流通の傾向、オーガストが投資している事業の評判など、市場調査全般をデイモンは引き受けているらしい。


「メルヴィル男爵家所有の孤児院にも、とりあえず支援金をお渡ししてきました」

「本当ですか!」

「ええ。シスターはこれで建物の修繕をするとおっしゃっていました。メルヴィル男爵とは最近連絡を取り合っていなかったそうですが、これをきっかけにまた手紙を書いてみる、と」

「良かった。少しでも孤児院がうまく行ってくれたら嬉しい」


孤児院はドロシアの母が一番手を尽くしていた事業だ。母が死んでからはシスターたちに任せきりになり、ドロシアも気になりながらも日々の忙しさに紛れて訪問していなかった。


「それとマクドネル子爵の話なんですが……」


デイモンが少し声を潜めると、オーガストはちらりとドロシアを伺い、「部屋に戻っておいで」という。
マクドネル子爵はドロシアがここに来たばかりの時に乗り込んできた貴族だ。


(あの時のオーガスト様は怖いくらいだった)


「では失礼します」


いかにも追い出されたようだが、仕事の話なのだろうからドロシアが首を突っ込むことでもないのだろう。

大人しく部屋をでたドロシアに、笑顔のチェスターが近づいてくる。


「ドロシア様、お話は終わりましたか?」

「いえ。……でもマクドネル子爵のお話になって、……遠慮したほうがよさそうだったから出てきたの」


素直にそう言うと、チェスターは隣に立ち、気遣うように顔を覗き込んできた。
チェスターは人の心の機微に敏感なのかもしれない。いつだってドロシアが落ち込んでいるとこんな顔で見ていてくれる。

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