遠い昔からの物語

「箸が進んどらんのう。口に合わんか」

俯きがちなわたしの顔を覗き込むようにして間宮中尉は云った。

わたしはぶんぶんと頭を振った。

日支事変が始まった当初は、内地の生活はほとんど変わらなかったから、遠い大陸での話だと思っていた。

ところが、長引くにつれて、だんだん物が出回らなくなってきて、木綿などの生活必需品の統制が始まった。

そして、とうとうこの春、大都市から順に米までもが配給になった。

御膳にあるのは、今では手に入りにくくなった「御馳走」ばかりだ。

都市(まち)に住んでいるとは云え、海のそばにあるから魚は比較的手に入るが、ここに並んだ魚はそれとは別格だ。

魚のような海の幸だけではない。山の幸も用意されていた。

これが「軍の力」なのだろう。

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