強引専務の身代わりフィアンセ
 今日は、どこで寝よう。

 昨日は流れで、彼と同じベッドで寝てしまったけれど、自分からここで待つのもなんだか気が引けた。迷った末、奥の書斎のソファで横になることにする。

 むしろ、ここで先に寝てしまった方が、彼も観念してベッドを使うだろう。

 今日は時間も遅いので、母にメールで業務報告をしておく。すぐに「お疲れさま。おやすみ」と絵文字付きの返信があったので、私は明かりを落とし、ソファに横になって体を丸めた。

 暖色系のライトに照らされた部屋は、また別世界だ。眠りを誘うのにちょうどよさそうなのに、どこか興奮しているのか目が冴えてしまっている。

 体は疲れているはずなのに。原因は交流会に参加したことだけじゃない。さっきの一樹さんの発言がずっと頭に引っかかっている。

『片思いなんて、なにが楽しいんだ? 少なくとも俺はもう終わらせたい』

 もう終わらせたい、というのは片思いのことなんだろう。彼は今、誰かに片思いをしているらしい。誰に? そんな相手がいるなら、どうして私を――。

 そのとき、部屋のドアがノックされ、私の体に緊張が走った。昨日はここで真面目に返事をしてしまったから、いけなかったのだ。

 今日はもう無視。すると、部屋のドアががちゃりと開いたので、内心で目を見張る。けれど、私は動かずに目を閉じたままでいた。

「寝てるのか」

 そうです、寝てるんです。というのは声には出さずにじっとしていると、なにを思ったのか彼がゆっくりとこちらに近づいてきたのが気配で伝わってきた。
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