強引専務の身代わりフィアンセ
「美和が仕事としてて必死に婚約者役をしてくれるのが、嬉しくもあり腹立たしかったよ。俺のためじゃない、仕事だからなんだって。俺じゃなくても、そうなのかって。……実際はどうなんだ? 触れるのを許してくれるは、こうして俺を受け入れてくれるのは、俺が依頼者で、婚約者役をお願いしたからなのか?」

 自分の気持ちを思い起こして、伏し目がちになって彼から視線をはずす。でもすぐに一樹さんの目を見つめ直した。

「仕事だからってずっと自分に言い聞かせてました。私は代わりだからって。でも、ずるいです。一樹さんはこっちが必死になってしている線引きをあっさり越えてくるんですから。おかげで私、たくさん悩んで、すごく苦しかったです。エキストラ失格ですよ」

 私は彼とは違って、瑪瑙を見つけられるような引きの良さは持っていない。特別な能力もなくて、この仕事にしても、会社にしても、きっと私の代わりになる人はたくさんいる。

 でも、それでも、彼に望んでもらえるのなら。

「好きです。契約が終了しても、代わりじゃなくても、私自身としてそばにいてもいいですか?」

 言い終わると、一樹さんは目尻にそっとキスを落としてくれた。

「こんなややこしいことしてなんだが、俺は最初から美和しか見ていないよ。代わりなんていないし必要ない。美和だけなんだ」

 なんだか泣きそうになって私は震える唇をぎゅっと結んだ。

「いくらでも代わりがいる、なんて考え、改めさせてやる。ほかのなにものにも代えられない存在なんだって、今まで傷ついた分、これからじっくりと味わえばいい」

 そう言って唇が重ねられる。私はゆっくりと目を閉じて、彼からの口づけを今度は安心して受け入れた。改めて抱きしめ直され、密着しながら角度を変えては、何度も繰り返されるキスに次第に酔っていく。
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