強引専務の身代わりフィアンセ
 感想を求められながら、色々と説明してくれるが、私は色の好みくらいしか言えなかった。

 そして、ドレスのほかにも、仕事として同行するのにふさわしいフォーマルなワンピースも何点か選んでもらい、ここでの任務はなんとか達成することができた。

「せ、一樹さん、お待たせしました」

 疲れを顔に出さないように、と思いながら待ってくれていた専務に声をかける。

「無事に決まったか?」

「はい、なんとか」

 私ひとりでは、とてもではないが選べなかったに違いない。なので、ある意味女性店員が付きっきりで助かった。彼女は出してきたドレスたちを整理しながら専務に声をかける。

「とっても素敵なものを選ばれてましたよ。試着したときに、お連れ様にお見せしますか?って聞いたんですけど、お客様が遠慮なさいますから」

「い、いえ。そんなお見せするほどのものでは」

 あたふたと専務と彼女の両方に向かってフォローする。わざわざ専務を呼んで、見せるほどのものでもないし、なにより気恥ずかしい。

 そう思ったものの、はたと気づく。専務の依頼でここに来たのだから、彼に確認してもらうべきだったのだろうか。

「べつにかまわない」

 そんな不安を打ち消すかのように専務は端的に告げた。そのことに安心するよりも先に、軽く針で突かれたような痛みを覚える。原因は自分でもはっきりしないけれど。

 それなのに、続けられた言葉はさらに私の感情を迷走させた。
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