強引専務の身代わりフィアンセ
「美和」

 名前を呼ばれて、どこか別世界だった私は現実に戻される。専務と女性の視線を一手に引き受け、なんとも気まずい気持ちになった。それを顔に出さないようにはするけど。

 女性店員は微笑みを浮かべながら、なにかを測るように顔を上下に動かして私に視線を送ってきた。

「承知しました。では、しばらくお待ちくださいね」

 彼女は専務に笑顔を向けて、私を奥に促した。けれど私はなんのことかさっぱりだ。不安げな眼差しで専務を見ると、無表情のまま頭に手を置かれる。

「そんな顔しなくていい。彼女がアドバイスをしてくれるから、好きなものを選んでおいで」

 まるで子どもに言い聞かせるような仕草、口調。乗せられた手の重みに心が乱される。そっと手が離れたが、私の気持ちは落ち着かないままだった。

 そして、女性店員に奥に連れていかれ、そこから私はまさに着せ替え人形だった。

「イブニングドレスは、肌を露出するほどフォーマルなんですよ」

「私、あまり背が高くないんですけど」

 美弥さんと違って、というのを心の中でつけたす。すると女性は屈託なく笑った。

「大丈夫。女性はヒールという強い味方がいますから」

 華やかなカクテルドレスやイブニングドレスを彼女は次々に持ってきて私に合わせていく。結婚式の参列者として代行することが多々あるので、我が家にもそれなりにパーティードレスは揃えてある。

 けれど、持ってきてもらう品はどれもが上品なデザインで、布の作りからして違うのが見てとれた。シンプルなのに滑らかなサテン生地や光沢を放つベルベッド生地は目を奪われる。
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