元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

豪華なドレスを着た女性が、恥ずかしげにうつむいている。けれどただうつむいているだけではないように感じ、扇でこちらの顔を隠しながら隙間から詳しく様子をうかがう。

若い女性は眉間に深いシワを寄せていた。まるで声を殺すように、厚い唇を噛みしめている。やっぱり変だ。

男性の方に視線をやると、彼はなぜか楽しそうに、優越感に満ちたような顔をしている。その手元を見て、ぎょっとした。彼は壁際に寄って誰にも見られないように、女性のおしりを触っていた。

どうやら彼女のドレスは腰のところで別れているセパレートタイプらしく、隙間から手を入れられている。女性の膨らんだスカート部分が不自然に揺れていた。

それ以上は考えるより先に、体が動いていた。私は慣れない靴で男女に近づく。

「なんだ、きみは」

突然目の前に立った私を不審に思ったのか、痴漢野郎が私を見下ろす。不審なのは、お前の方だ!

「その手を放せ!」

持っていたグラスを勢いよく彼の方に突き出す。すでにぬるくなっていた白ワインが痴漢貴族の顔面に直撃した。

「わっぷ!」

男はたまらず、女性のスカートから手を出して顔をぬぐう。


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