元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する

次の日。

「こらー! せっかく補給したばかりの食料を貪るなっ!」

さあ今から船の中に積みこもうという、補給のために買い付けた食料をライナーさんとその直属の部下、合わせて六人が略奪しているのを発見し、声を張りあげた。

「なんだよう、ちょっとくらいいいじゃないか」

「ちょっとじゃない。私が怪我で臥せっている間、あなたたちが酒場で好きなだけ遊んだ証拠は残っているんですからね」

多額の領収書を突き付けると、ライナーさんはうっと唸ってのけぞる。

「アドルフ、こいつ可愛くないよ」

ちょうどそばを通りかかったアドルフさんに、ライナーさんが助けを求める。

「自業自得。補給物資に手をつけちゃいけない。それより、昨夜寝床を共にした女性に挨拶しなくていいの?」

やっぱり、やってたか。アドルフさんはおっとりした顔立ちだけど、言うことは意外に辛辣。ライナーさんは忌々し気に舌打ちした。

「あと腐れなく別れた方がいいんだよ」

「丁寧にしておいた方がいいよ。またいつ寄るかわからない土地だから」

「この戦いが終わったら、しばらく平和になるだろ」

この戦いが終わったら。敵軍が全兵力を挙げるというこの戦いが終わったら、長く続いている戦争に一つ終止符が打たれる。

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