元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
私はそのとき、どうなるんだろう。本当に、レオンハルト様の花嫁になるのかな。
昨夜のことを思い出すと、顔から火が出そうになる。
お姉様、ごめんなさい。綺麗な体のまま帰ると約束したのに、あっさり破ってしまった。
「おい副官、仕事ははかどっているか?」
後ろから声をかけられ、ビクッと全身が跳ねてしまった。低い声の主は、レオンハルト様だ。
「ええ、休息をいただき、ありがとうございました」
何もなかった風を装い、敬礼で返す。
いつまでもベッドで寝転んでいるわけにはいかない。残った人員や物資、被害状況の把握をしてそれぞれ処理をしなくてはならない。
現地で調達できるものをより安く調達できるように交渉し、職人を見つけて傷んだ船を修理してもらう。
今の状況をアルバトゥスに伝える手はずを整えたり、怪我人を旗艦に収容して全艦の人数を調整したり、地味にやることが山のようにある。
そして一刻も早く出航できるようにしなくては。敵が態勢を立て直す前に。
「ほんと、頑固だよな。迎えにくるからここで待ってろって言うのに」
「そんな当てにならない約束を信じてただ待てるほど、私は大人じゃありません」