元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
周りに聞こえないほどごく小さな声でぼそぼそと会話する私たちを、ベルツ参謀が横目で見ながら通り過ぎていった。
「プロポーズの返事も、まだ聞いていないんだが」
「そのお話は、戦争に勝ってからにしましょう。そもそも、最初から勝って帰ったら花嫁を獲得できるという約束ですから」
「なるほど」
レオンハルト様はくすくすと笑い、皆の方を振り返る。
「さあ働け。 準備ができたらすぐに出航だ。 勝利して祖国に帰るぞ!」
「おう!」
ライナーさんの部下たちが元気に返事をし、船の方へ駆けていった。良かった、みんな無事で……。
「そう言えばルカ、お前すごいぞ。提督の命を救ったんだ。昇進間違いなしだな」
ライナーさんが肘で私を小突く。
「うん、ルカ偉かった。さすがレオンハルト様の選んだ副官だ」
アドルフさんはストレートに褒めてくれる。
「さあ仕事だ。行くぞ副官殿」
「は、はいっ」
レオンハルト様に肩を叩かれる。ぼーっとしていた私は、慌てて軍服を翻して歩くレオンハルト様の後をついていった。