元帥閣下は勲章よりも男装花嫁を所望する
私より階級が高い人も低い人も混じって少し話をした後、彼らは満足げにテーブルから離れていった。
「皆、きみの副官としての働きを認めたということだろう」
初日にはっきりと私が副官として務まるのか疑問を呈したベルツ参謀が静かにジョッキを傾ける。一口飲んでそれを置くと、参謀はこちらを見た。
「私も、きみの働きには感服したよ。提督を守ってくれたこともさることながら、事務処理の迅速さは目を見張るものがある」
「いえ、そんな」
「これからもよろしく頼むよ、副官殿」
いつも硬い表情のベルツ参謀がすっと分厚い右手を差し出した。私は慌てて自分の両手を出し、参謀の手を握った。そんな私たちの姿を、アドルフさんがにこにこと微笑んで見ていた。
「でも私、皆さんみたいに戦いのお役には立てなくて……」
「いいんだよ、そんなの。ルカはルカにしかできないことをやってくれれば。ルカの仕事は艦隊が正常に機能するために欠かせない仕事だからね」
アドルフさんの優しいセリフに涙が出そうになった。ベルツ参謀の手も温かい。
みんなが私を仲間として認めてくれた。嬉しいと思うと同時、申し訳なくなる。私はみんなをだましている……。