無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「……共通の敵がいたほうが、団結力が上がるだろ」

「え……?」

 私が首をひねると、冴島さんはごまかすようにケーキを一口食べて、ソファの上であぐらをかいた。

「営業のやつらはそれぞれがライバルみたいなものだから、仲間同士ではあまり本音を語らない。けど、上司の悪口が言えれば飲みの席は盛り上がるだろうし、仲も深まる」

 すこし恥ずかしそうに言ってから、「それに」と続ける。

「普段厳しくしているぶん、褒めたときの効果は大きい」

 あっけにとられた私は、ふと思い出す。

 そういえば、いつかの営業部門と生産部門の合同ミーティングのとき、普段からクールを装っている宮田くんが、部長に褒められて喜びを隠しきれていなかった。

 鬼上司の仮面に、そんな意図があったなんて。

 驚きつつ、でも、と思う。

「それでいいんですか?冴島さんは普段と違う厳しいキャラクターを演じて、わざと嫌われてるってことですよね?そんなの疲れるじゃないですか」

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