無慈悲な部長に甘く求愛されてます
足取りはしっかりしているけれど、確かに酔っていたような……。
それに、もっといろいろ訊かれると思ったのに、だいぶあっさりだった。
もしかすると、冴島さんがいるから気をつかってくれたのかもしれないけれど。
「ていうか、こんな時間にこんなとこで何してたんだろう……」
あたりはすっかり闇に沈み、帰宅をする人影も見当たらない。
「向こうも待ち合わせじゃないか?」
後ろにいた冴島さんが突然つぶやいた。
驚く私を見下ろして、彼は平然と言う。
「気付かなかったか?こっちに声をかけてくる前、彼女、男と一緒にいただろ」
「え」
あわてて薄暗いアプローチを見渡すけれど、そこにはもう誰もいない。
「俺に気づいたとたん、男のほうが離れていったけど、あとでまた合流するんじゃないかな」
「男って……会社の人ですか?」
「暗くてわかりにくかったが、あれはたぶんカミヤの人間じゃないか?」
「カミヤって、うちと顧問契約をしてる法律事務所の?」
「……まあ、本人から聞くのが一番だな」
小さく言って、冴島さんは「俺たちも帰ろう」と足を踏み出す。