無慈悲な部長に甘く求愛されてます
少し考えるように上を向いたあと、彼女はぽつりと言った。
「全部、計算だと思うけど」
「……えっ!?」
「だって昨日、目が合ったもの。彼、私がいることをわかったうえで和花にキスしたのよ」
箸を落としそうになった。
真凛はつまらなそうな顔でブラックのコーヒーをすすっている。
「なんで、そんなこと……」
「和花のことだから、私に話したいのにタイミングが見つけられないって、悩んでたんじゃないの?だから彼はわざとああして、きっかけを作った、とか?」
私は真凛をまじまじと見つめてしまった。
たしかに、真凛にどうやって話そうか考えてはいたけれど、そんなこと、冴島さんにはひとことも言ってない。
でも、と昨夜のことを思い出す。
そういえば、冴島さんはエントランスのドアをくぐる前から真凛に気づいていたようなことを言ってなかった?
《彼女、男と一緒にいただろ》
「ねえ真凛、昨日の夜――」
「まったく、愛されまくってるわね」
声が重なって、私は言葉をのみこんだ。
その瞬間「小松ちゃん!」と名前を呼ばれて振り返ると、キューを持った池崎さんが嬉しそうに駆けてきた。