無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「セクハラするくらい手作り弁当に飢えてるなら……」

 冴島さんは笑っていた。

 会社では見たことのない、満面の笑みだった。

 ただし、目の奥は笑っていない。

 それが逆に凄みを帯びて、恐ろしいほどの笑顔になっている。 

「毎日、俺がたっぷり愛情を込めて作ってやる」

 池崎さんの顔が恐怖に歪む。

 猛獣か、あるいは幽霊にでも遭遇したみたいに頬を引きつらせて、口をぱくぱくさせる。

「けっ、結構です!!」

 一目散に逃げていく背中を見送ると、冴島さんはくるりと私に向き直った。

 そこにはもう笑みはなく、それどころかいつもよりも厳しい表情が浮かんでいる。

「まったくあいつは!」

 吐き捨てるように言うと、冴島さんはさっきまで池崎さんに握られていた私の手を取った。

 えっと思うまもなく左手が持っていかれる。

 そして、

「っ……」

 手の甲に、唇が触れる。

 ほんの少し濡れた感触に、どっと心臓が脈打った。


 彼自身が目隠しになっているとはいえ、すぐそこに同僚がいるのに。

 はっとして目を向けると、真凛は冴島さんを見上げて固まっていた。その顔は真っ赤だ。

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