求めよ、さらば与えられん
小人から受け取った小さな剣。それは私の小指程もなかった。けど鋭く手入れの行き届いている剣の切れ味は抜群だった。


窮屈そうにはめられた轡を取って、頬に触れた。


力を使い終わると足に力が入らなくなった。崩れ落ちる様に座り込むと、急な吐き気に襲われた。床を拳で思い切り叩きつけ、グッと堪えた。



「はぁ…はぁ……っ…」



膝上に涙が落ちていく。


顔を上げられないでいると、ひょこっと小さなペガサスの顔が覗き込んできた。



「心配、してくれてるの? ありがとう」



深呼吸をして大きなペガサスを見上げた。



「私のお願いを聞いてくれる?」



頭を下げられ、そっと鼻先に触れた。


気高く、美しいペガサス。身体中についた血を拭えば、白く美しい身体にまた感動するのだろう。


私は白衣を脱ぎ、ペガサスに差し出した。



「マクブレイン国のジーン王子にこれを渡して、ここまで連れてきてくれない? ジーン王子は漆黒の瞳と髪の毛をしているわ」



ペガサスは私の白衣を口に咥えた。


手で床をグッと押し、よろつきながら立ち上がった。膝がガクガク笑ってる。


ペガサスとおでこを合わせ、ジーン王子の顔を思い浮かべた。


どうか伝わって……そう願いを込めた。



「さぁ、行って」



一歩後ろに下がると、大きなペガサスは体勢を変え勢いよく荷台を飛び出した。幼いペガサスもその後ろにピタッとくっつき、翼を広げ飛び立って行った。


立っていられなくなった私は座ることもままならず、その場に倒れ込んだ。


馬車は急に止まり、辺りが騒がしくなったけど、気にする間もなく意識が何処かへいってしまった。





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