求めよ、さらば与えられん
____ッ!?


突然の激しい揺れに現実に連れ戻された。


変わらない冷たい木の感触が頬や腕、足から伝わってくる。全身が痛い。怠い。頭が割れそうだ。


外から聞こえる叫び声や悲鳴に体が強張った。次は何が起こってるの?こんなところで横になってる場合じゃない。うまく身体に力が入らない。でもなんとか上半身を起こした。


近くに転がっている剣を取り、小人にお礼を言って返した。



「大丈夫でしゅか?」

「全然大丈夫。 外の様子見てくるね」

「無理しちゃダメでしゅ!」

「止まってる今がチャンスでしょ?」



せめてこの馬車だけでも奪えたら……。


私はまだ諦めたくない。あの日死ぬことよりも生きる事を選んだ。まだ歩みを止めたくない。


そーっと布の隙間から外を見た。外で繰り広げられている光景に言葉が出なかった。言葉よりも先に出たのは涙だった。



「ベアトリーチェ!!」



珍しく焦った様子のジーン王子に抱きしめられた。せわしなく動く鼓動。いつもより乱れた息遣い。全身から伝わってくるジーン王子の温もりに一生懸命しがみついた。


助けに来てくれた。



「ど、うか……っ、みんなを森、へ……」

「ベアトリーチェ!? ベアトリーチェ!!」

「…………」



ジーン王子の声がどんどん遠のいていく。


身体中が痛くて辛いはずなのに、幸せな気分だった。





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