求めよ、さらば与えられん
これ程までに穏やかな声で話すジーン王子は初めてだ。不思議と時間もゆっくり流れて行くようだった。



「家に連れていかれてまさかルーカス王がいるとは思ってなくて、驚いた。 未だにあの驚きを超える驚きはない」

「パパの事、もう知ってたんだね」

「公務で何度か顔を合わせていたからな。 だがルーカス王は俺を殺そうとした」



パパが?



「どうして?」

「人里離れた家でひっそりとした暮らし。 子供ながらに知ってはいけない事を知ってしまったのだと直ぐに悟った。 アヴァ様の存在以上に、お前の存在を知られる訳にはいかなかったのだろう」

「私も居たの? 覚えてない……」

「当たり前だ。 まだ赤子だったからな」



私たちそんな昔に出会ってたんだ……ジーン王子はその時から私の事を知っててくれたんだね。



「ルーカス王が警戒するなか、背に庇ってくれたのがアヴァ様だった。 『怪我して不安になってる子供に、これ以上怖い思いをさせたら私が許さないわよ』と言ってくれた。 アヴァ様には頭が上がらない様だった。 威厳溢れるルーカス王の印象がガラリと変わった」

「あははっ、ママは強かったのね」

「強くて笑顔の絶えない方だった。 赤子のお前を抱いている時のアヴァ様の瞳は穏やかで、女神のように美しかった」





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