求めよ、さらば与えられん
私もママとちゃんと話をしてみたかった。今この時もいて欲しかった。ママだけじゃなくて、パパにも側にいて欲しかった。


目元を拭われた。



「傷口から感染症を起こした俺は数日うなされていた」

「もう助からぬというところでそ奴を救ったのはそなただ、ベアトリーチェ」



ジーン王子の隣にスーッと現れたアウロラ。



「アヴァ様に抱かれたお前が俺に触れた途端、俺の傷も熱も一瞬で消えてしまった。 その時のアヴァ様のか__」



急に黙り込むジーン王子は僅かに目を伏せた。



「ママがどうしたの?」

「いや、驚いた顔が忘れられない…そう言いたかったんだ」



何?この雰囲気。上手く言葉では言い表せないけど、少し違和感を感じた。


あれ?



「じゃあアウロラもママの事を知ってるの?」

「アヴァとは数少ない親しき友だった。 そんな友をルーカスに取られて腹を立てたわらわは、数えきれぬほどルーカスに意地悪をしてやったわ」



その時の事を思い出しているのか、アウロラの顔は楽しそうだ。それに悪い笑い方。



「黙っていて悪かった。 怒っておるか?」



私は首を横に振った。



「話したくなったらママの事、パパの事教えて」

「約束しよう」



私たちは小指をそっと合わせた。





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