求めよ、さらば与えられん
アウロラの手が頬に触れてボロボロと涙がこぼれ落ちる。



「よく泣くな」

「しょうがないっ、でしょ……」



そんな事を言いながらも涙を拭ってくれるジーン王子。その手つきから優しさが伝わってくるものだから余計止まらない。涙は止めたいけど、でも触れててほしい。自分のワガママさ加減に呆れる。



「しばらくの間お世話になったお陰で、ルーカス王との距離が近付いた。 あの方を知れば知るほど、俺は尊敬した」

「ふふっ、ありがとう」



私が褒められたわけじゃないけど、パパの事をそう言ってもらえて嬉しかった。



「ある日、ルーカス王に頼まれた。 『私亡き後、ベアトリーチェを守ってほしい』と……」

「え……?」

「方法は任せると言われた。 俺を信じているから…と……今思えば酷い丸投げだと思わないか?」



そう言ってジーン王は鼻で笑った。その笑い方はただ呆れているのではなく、しょうがない人だとでも言わんばかりの顔だった。



「ルーカス王亡き後のバルドック国の統治は酷いものだった。 貧富の差は激しく、王族、貴族ばかりが優遇されていた。 根を正さなければ何も変わらないと思った。 だから俺は血で支配する道を選んだ」

「だから、戦争を仕掛け力尽くで戦う術を奪ったの? だから、王族を殺したの?」





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