北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
◆
「えっ、入っていいの? あ、これ、どうぞ」
自分の部屋を出たとたん、階下から佐佑の声が聞こえてきた。
目覚ましナシで夕飯前に起きてみればこれだ。声の大きさからして、ドア越しじゃなくて、ドアを開けたまま話している。
おれがまだ寝てると思って好き勝手するな。
現場を押さえるつもりで一歩踏み出すと、「ありがとうございます。独断ですけど大丈夫ですよ」凛乃の返事が聞こえて足を止めた。
「わたし個人として、直接お渡ししたいものがあって」
ここからだと、角度がありすぎてふたりの顔や手元が見えない。紙をこするような音のあと、佐佑が「お守り?」と聞き返した。
「はい。このあいだ、奥様が戌の日のお祝いをされたとお聞きしたので、いつもお世話になっているお礼がてら、ちょっとでしゃばってしまいました」
「いやいやいやいやそんなそんな! ありがとう! でも、ふたつあるんだね」
「えっ、入っていいの? あ、これ、どうぞ」
自分の部屋を出たとたん、階下から佐佑の声が聞こえてきた。
目覚ましナシで夕飯前に起きてみればこれだ。声の大きさからして、ドア越しじゃなくて、ドアを開けたまま話している。
おれがまだ寝てると思って好き勝手するな。
現場を押さえるつもりで一歩踏み出すと、「ありがとうございます。独断ですけど大丈夫ですよ」凛乃の返事が聞こえて足を止めた。
「わたし個人として、直接お渡ししたいものがあって」
ここからだと、角度がありすぎてふたりの顔や手元が見えない。紙をこするような音のあと、佐佑が「お守り?」と聞き返した。
「はい。このあいだ、奥様が戌の日のお祝いをされたとお聞きしたので、いつもお世話になっているお礼がてら、ちょっとでしゃばってしまいました」
「いやいやいやいやそんなそんな! ありがとう! でも、ふたつあるんだね」