北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「お父さんとお母さんがペアで持つお守りだそうです。お父さんもこれからもっとご自身を大事にしていただかないとですから」
「う、うう、ありがとおおお! 維盛さん、いいひとだねええ!」
 抱きつきかねない感激ぶりに、累は急いで階段を駆け下りた。
「あ、累、おはよう! 維盛さんにお守りもらったよ!」
 佐佑が、ご褒美をもらった犬みたいに盛大な笑みを向ける。対照的に、凛乃の笑みはイタズラをごまかす犬みたいにおどおどしていた。
「おはようございます……」
「……おはよう」
「グレープフルーツいただいたんで、瀬戸さんに安産のお守りをお渡ししようと思って」
「うん」
 叱るつもりは毛頭なかったけど、先に言い訳されると叱ってるみたいになる。雇用契約をベースにしている凛乃との、この見えない鉄格子を、佐佑はいともたやすく横から回り込んでしまう。
 累は八つ当たり気味に顎をあげた。
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