北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「日干ししたほうがいいんじゃない?」
「晴れればな」
「明日の天気、どうだっけ?」
 佐佑が空を見上げた。梅雨の合間の薄暗い曇天は湿気を含んで、いまにも雲ごと落ちてきそうだ。
 埃だらけのソファの上を断念して、ふたりが両脇に腰を下ろすと、凛乃がトレイにふたつ、冷たい麦茶を運んできた。
「おつかれさまです」
「ありがとう」
「わー、いただきまーす。んー、さすが気が効く家政婦さんだねー」
「いえ、そんな」
 はしゃいで話しかける佐佑を尻目に、累はあぐらをかいて麦茶を一気飲みした。
「おかわり、いりますか?」
 すかさず訊いてくれた凛乃に、グラスを渡す。
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