北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「凛乃も飲んで。蒸し暑さヤバい」
「はい」
 凛乃はうなずいて、麦茶を淹れに行った。“飛び散る新鮮なイチゴ”柄が、ひらりとひるがえる。鮮やかなレッドと背景のネイビーのコントラストは、どちらかといえばおとなしい印象の凛乃を華やかに見せている。
「かわいいエプロンだね」
 佐佑が声をかけると、「ありがとうございます」凛乃はキッチンの奥で照れた。
「そんないいの持ってたんなら、割烹着なんてジャマなだけだったね。ごめん」
「いえ、とんでもない、大活躍ですよ。いまは暑くなったんで休んでもらってますけど、涼しくなったらまた使わせていただきます」
「サスケは余計なことしなくていいから」
「なにが余計だよ。家政婦さんといえばエプロンだろ。おまえこそ雇い主として配慮するところだ」
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