北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「それは家政婦としての評価じゃないな」
「名前で呼び合ってるくせに、固いこと言うなよ。なあ、一目惚れだった? そうでもなきゃ家にすら入れなさそうだよね、おまえ」
「やめろ」
 思わず凄んだ。
 考えてはいけないことを、こいつは簡単に暴く。
「そういうことにならないって約束で来てもらってるんだから」
「へぇ! そうなんだ? それってどっちが言い出したこと?」
「あっち」
「手を出すなって釘刺された?」
「好きにはならないって言われた」
「ほー」佐佑は意味深に唸った。「見ず知らずの男の家に間借りするんだもんなあ。いくらおまえが無害そうでも、牽制くらいしとくよな。でも本気でムリなら、とっくに出て行ってるだろ」
「いま凛乃には住む家がない。引っ越す金もない。それで、しかたなくここにいる」
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