北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「おまえにはチャンスじゃない?」
「おれがなにか求めたら、住むところと引き換えの脅迫になってしまう。そんなことして気分がいいとでも思うか?」
 追及すると佐佑はさすがに肩をすくめた。
「慎重になってるってことはわかった」
 それから急に、叱るように怖い顔を作って言った。「でも、好きになったら嫌われるって思い込みは、まちがいだと思う」
 佐佑の真剣さが、ちくりと突き刺さる。それが良い薬のようにじわじわと苦かったから、累はカウンターを見舞った。
「忠告、どーも。お返しに、おまえが奥さんのパンツをお守り代わりに持ち歩いてるってことは、あと半年バラさずにおいてやる」
「なんで期限付けるんだよー秘密だって約束したのに」
「文句があるならもう帰れ」
「累の照れ屋さんめっ。覚えてろよ」
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