北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「……斜線で消したつもりだったんだけど」
 ふたりのあいだに、責めあうようにチクチクする沈黙がよぎった。すぐに根負けした凛乃は溜息を吐く。
「ずいぶん行き違いがあるみたいです。こちらには改めてほかのかたに来てもらって」
「いえ、あなたじゃないなら結構です」
 終始声に力がこもっていなかった累が、きっぱりと言い切った。
 凛乃は気圧されて一瞬、息を飲んだ。
「家政婦は要らないってことですか?」
「はい」
「でも、必要だから面接まで設定したんですよね?」
 累は肩をこわばらせると、返事の代わりに下を向いた。
「わたしのことはお断りいただいて結構なんですけど、依頼そのものをキャンセルされるということでしたら、紹介所のほうに説明が必要です。責任の所在をはっきりさせないとなりませんし、納得のいく理由をお聞かせいただけますか?」
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