北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
   ◆
 スーパーマーケットの広い店内に、ロッキーのテーマが流れはじめた。
 レジが混んでくるとかかる曲らしい。いつもならこういうピークを避けて来るのに、今日は出がけに立てこんでしまった。
 凛乃はスマートフォンでチラシアプリを眺めながら、足早にカートを押した。
 とはいえ今夜のメニューが思い浮かばない。なんとかひとに食べてもらえるレベルのレパートリーは、もう3巡はしたはずだ。
「暑いから、そうめんとかでいい」
 累がそう言いだしたのは、そろそろ飽きてきたという意味かもしれない。実家の家族相手なら提案どおりでいいけど、仕事ではそうはいかない。
「維盛さん」
 どこからか声をかけられてキョロキョロすると、通り過ぎたばかりの陳列棚からニコニコ顔の佐佑が駆け寄ってきた。
「ぐうぜーん。いつもこの時間に買い物?」
「今日はちょっと遅くなりました。瀬戸さんは?」
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