北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「よかったー、維盛さんがこういうハナシ聞いてくれる人で。累はなんかこう、苦笑いって感じで聞き流されることが多くてさ。まぁさいしょからあきらめてるけど」
「姉のところの姪っ子が2歳なんで、わりと既視感のある話題なんです」
「そうなんだー。累はあいかわらず、この時間まだ寝てる?」
「はい。そうですね」
 自分の答えにつられて、凛乃は忘れようとしていた累の寝顔を思い出した。
 魔境の整理に一区切りつけて1階に降りたとき、累はいつもどおり自室にいるものと思っていた。冷蔵庫の中身をチェックしてから買い物に行くつもりでキッチンに入り、ふと部屋が冷えているのを感じた。
 エアコン、切り忘れたっけ?
 昼食のあと魔境に上がるときに消したはずだと思いながら、リビングをふりかえる。
「ヒッ」
 ひきつった声をあげて、凛乃はソファで寝ている累を見下ろした。
 累はソファの袖部分をリクライニングさせて、膝がしっかり隠れる長さのカーゴパンツから脚をキッチンに向けて伸ばし、おだやかに眠っていた。
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