北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「笑わせようとしたことはないですけど、気持ちはわかります」
「もしかして笑うの見たことない?」
「さすがにそれはあるんですけど、でも、かなりレアだと思いますよ」
「だよねー」
佐佑はカートに身体を預けながら、ふと表情を曇らせた。
「あいつ、都会からの転校生で、美少年でさ。まぁ田舎のガキとしてはコンプレックス刺激されて、イジメみたいな、いや、イジメだな、名前がほらあれだから、女みたいだって囃し立てられてたんだよ、毎日のように。おれは止めることもできないで遠巻きにしてただけなんだけど、あるときおれの姉貴が持ってたマンガに、フランスの王様が出てきて、おなじ名前じゃんって気づいて。それで次の日だかの学校帰り、イジメを見つけたとき、ルイって王様の名前なんだって、知ってる? ってまぜっかえしてみたわけ。でもやつらは白けたりしないで、今度は王様ー、王様ーってからかいだした。おれがしょんぼり退場しようとしたら、累がさ、笑ったんだ。それまでほとんど声も出さなかった累が、ゲラゲラ笑ったの。おれもうれしくなって笑ったら、やつらも笑いだして、それでイジメは終わり。累はあのまんまでなんとなく受け容れられて。だからおれ、あいつが笑うとうれしいんだ。おれがうれしいから、笑かしたくなる」
「もしかして笑うの見たことない?」
「さすがにそれはあるんですけど、でも、かなりレアだと思いますよ」
「だよねー」
佐佑はカートに身体を預けながら、ふと表情を曇らせた。
「あいつ、都会からの転校生で、美少年でさ。まぁ田舎のガキとしてはコンプレックス刺激されて、イジメみたいな、いや、イジメだな、名前がほらあれだから、女みたいだって囃し立てられてたんだよ、毎日のように。おれは止めることもできないで遠巻きにしてただけなんだけど、あるときおれの姉貴が持ってたマンガに、フランスの王様が出てきて、おなじ名前じゃんって気づいて。それで次の日だかの学校帰り、イジメを見つけたとき、ルイって王様の名前なんだって、知ってる? ってまぜっかえしてみたわけ。でもやつらは白けたりしないで、今度は王様ー、王様ーってからかいだした。おれがしょんぼり退場しようとしたら、累がさ、笑ったんだ。それまでほとんど声も出さなかった累が、ゲラゲラ笑ったの。おれもうれしくなって笑ったら、やつらも笑いだして、それでイジメは終わり。累はあのまんまでなんとなく受け容れられて。だからおれ、あいつが笑うとうれしいんだ。おれがうれしいから、笑かしたくなる」