北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 凛乃は片付けを進めるにつれ、部屋の最奥にあるものが、最初に聞いていたような輸入代行の売れ残りやサンプル品じゃないことに気づいていた。
 ブルーグレーのシャビーなチェスト、その上に積まれた何冊かのアルバム、ポールに引っかけられたユニフォームのようなものや、くすんだ色のナップサック。
 家族や自分のこれまでの歩みが、魔境の大海に浮かぶ孤島のように、ぽつんと捨て置かれている。
 いまはただ、やさしいまなざしを投げかけている累に、凛乃はいちばんの大物を指さした。
「ベッドを発掘したんですけど、そこ」
「ああ」
「わたしが使わせていただいてるマットレスは、もともとこれ用だったんですよね? お父さんがいらしたときは、どうしましょう。泊まり用のお布団がないと困りますよね? とめ子さんのお布団はもう処分されたみたいだし」
「いつもホテル取るから、いらない」
「そうですか。なら、まぁ」
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