北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 累が掃出し窓を開け放った。左斜めうしろに並んだ凛乃の髪を、熱くて湿った風がそよがせる。
「がんばったね、凛乃」
 肩越しに、累がほほえむ。
「はい」
「ありがとう」
「はい……」
 視線を受け止めていられなくなって、凛乃はベランダ腰壁のスリットから庭を見下ろした。
 見慣れてきた景色が、ちがう角度からだと、まったく新しい。家寄りの砂利敷き部分以外は、もう雑草がはびこっているのに気付いた。累の方針で、除草剤を撒いてない。たぶん、猫が入ってこなくなるといやだから。
 つるこちゃんが居つかなかったの、よっぽどショックだったんだな。
 ホコリの厚みや化粧品の類の製造年月日を見れば、累がこれほどモノを溜めこんだのは、この1、2年ほどらしいことがわかる。もっと年季が入っていたなら、こんなに早く片付け終了の目処はたたなかった。
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