北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「びっ……くりした。首がないのかと思った」
 そんなわけはない。
「おれ、何度も凛乃に悲鳴あげられてる気がする」
 呆れ半分、うらめしさ半分で、肘をついて凛乃を見あげた。
「だって……累さんってなんていうか、儚いんですもん」
 凛乃は苦しい表現でごまかした。
 ふくらんだエコバッグを片手に提げているところを見ると、片づけじゃなくて買い物に出ていたらしい。もう意図して累の目を盗んでいるとしか思えない。
「おかえり」
 哀しい発想を追い払いながら、累は身体を起こした。
「ただいまです」
 凛乃は累の横に来て膝をついた。シャンプーなのか香水なのか、さわやかな柑橘系の香りが、揺れながら累に触れてくる。
「どうして縁の下見てたんですか?」
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