北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「猫の鳴き声が聞こえた」
「いました?」
「いない」
「そういえば最近、鈴の音がしませんね。音がするから猫がいると思ってたのに、声がしても実物の猫が見つからないなんて」
 そういえば、そうかもしれない。でも条件反射で動く身体に反して、見つからずに落ち込む自分はいなかった。
 近くに凛乃を感じながら、累は濡れ縁に胡坐をかいた。その顔を覗きこむように、凛乃が首を伸ばしてくる。
「もしかして累さん、熱あります?」
「ないけど?」
 唐突な質問に、首をかしげる。
「顔、紅いです」
「頭下げてたから、血がのぼっただけじゃない?」
「それならいいんですけど」凛乃の目が疑っている。
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