北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「昨日、累さんの部屋から出たゴミ袋がいつもより大きい気がして。それでもって、ふわふわしてるし、そういえば箱ティッシュの在庫が5個パックごと減ってたし、風邪かアレルギーで鼻をかみまくってるのかなと」
 やんわりとした追及が終わるまえに、累はゆっくりと、でも確実に凛乃から目をそらした。立てた膝のあいだに頭をつっこんで、赤くなっているであろう耳や顔を隠す。
「なんでもない」
「あ、ゴミを漁ってるわけじゃないですよ! 持った感じで勝手に心配しちゃっただけで。でも不快でしたよね。ごめんなさい!」
 真剣な謝罪が、かえって羞恥をあおる。こんなに気遣われたあとで気づかれたら、二度と口をきいてもらえないかもしれない。
「だいじょうぶ……忘れて」
 このあいだ半裸を見ただけで思春期みたいな反応をしておいて、わかっていながらとぼけられるとは思わない。つまり凛乃は、累がそんなことをする生々しい生き物だと思い至ってない。
 凛乃のなかでのおれは、亡霊かなにか?
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