北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 リビングの壁にかかった時計を見ると、11時を過ぎていた。当初の約束では、凛乃は昼食を挟む休憩を取っているはずの時間だ。
 累はテレビのないテレビ台の中をごそごそ漁った。
「凛乃、来て」
「はい」
 エコバッグをくるくると丸めながらリビングに来た凛乃が、こたつテーブルの上でトランプを二つの山に分けている累を見て、あっけにとられた。
「やるんですか?」
「ババ抜きしよう」
「ふたりで?!」
「じゃあジジ抜き」
「おなじことかと……」
「神経衰弱は?」
 こたつテーブルの一角を陣取っていたスマートフォンをTシャツの胸ポケットに投げ入れ、手早くトランプの山を崩していく。凛乃はとまどいながらも、向かい側に腰を落ち着けた。
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