北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
 めくったカードを伏せようとした累の手に、凛乃の手が重なった。開けたカードは2枚とも数字の2。見もせずにめくっていたのは累だけらしい。
 そろったカードを重ねて、累は次のカードをめくった。触れていそうで、かろうじて触れていなかった肌に、凛乃の熱が残っていた。
 ペアができなかったのを見届けて、凛乃が新しいカードを選ぶ。
「ごめんなさい。なにか言いかけてませんでした?」
「……忘れた」
 出鼻をくじかれて、言おうと思っていたことが吹っ飛んでしまった。
「リセットしていい?」
 自分のターンになってから、累はカード全体を大胆にかきまぜた。重なるカードをならしていると、
「累さん」
 凛乃が居住まいを正して、思いつめたような表情を浮かべた。
「ちょっとご相談があるんですけど」
 累は手を止めた。
「この家、わたしに売ってくれませんか?」
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